大判例

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鰺ケ沢簡易裁判所 事件番号不詳 判決

主文

被告人を罰金四千円に処する。

右罰金を完納することが出来ないときは、金弐百円を壱日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は昭和三一年四月六日午後一〇時過頃、自宅寝室において窓硝子に火の反射したのに不審を抱き外部を見たところ同所より南方一〇米位離れた場所で菰が燃えていたのを発見し消火に赴く際偶々其の附近で男の姿を見て近所の成田何五郎と思い込み確証のない同人を恰も其の菰に放火したものであると称して同年五月二〇日頃自宅において同村の佐々木常夫及び成田浪造に対し其の旨放言し更に六月一〇日頃前記成田何五郎方において同人の妻キネ、長女せつ、及び近所の成田やよ、成田ふこ、成田ミセの居る面前で右事実を放言し以つて公然事実を摘示して右成田何五郎の名誉を毀損したものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

判示事実につき刑法第二三〇条(罰金刑を選択する)罰金等臨時措置法第二条、第三条

換刑処分につき刑法第一八条

訴訟費用につき刑事訴訟法第一八一条第一項本文

(弁護人の主張について)

弁護人は或事実を公表したものがその事実を真実なりと信じ、かつかく信ずるに過失がなかつたと認められる場合は故意の責任を阻却されると主張する。

なるほど名誉毀損罪において、行為者がその事実を真実であると信じておつた場合は故意をかくものとみる説もあるが、本来刑法は外観上の名誉をも保護しようとする根本的態度を持しているものと考え、刑法二三〇条ノ二に「真実ナルコトノ証明アリタルトキ」とある法文は、ただ証明あるときに限り処罰しない趣旨と解するを相当とするから、弁護人の右見解を採ることはできない。

なお弁護人は本件においては公然性がないと主張するが、刑法二三〇条にいう公然たるには必ずしも事実摘示をした場所に現在した人員の衆多であることを要せず、二、三人に対して事実を告知した場合でも他の多数人に伝播すべき事情があれば公然というべく、本件被告人の事実を摘示した場所に居合せた者から他の多数人に伝播すべきことは自ら明かであるから、右の主張も理由がない。

よつて主文のとおり判決する。(昭和三三年二月二四日鯵ケ沢簡易裁判所)

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